ご相談内容
M県在住のナオさん(50代)は、結婚して23年、一人息子は半月後には大学進学のため家を出て学生寮に住み、夫婦だけの生活が始まる。夫と2人きりは耐えられそうにないとウツ状態にあった。日が沈み帰宅時間が近づくだけで激しい動悸がすると、精神安定剤を服用していた。
「今夜は出張で留守だから電話できたけど...暴力がひどくて」 離婚も考えてると憔悴した声で、「聞いてもらえますか?」と ここ数年で豹変してしまった夫との暮らしぶりを話された。
社内恋愛で6年の付き合いを経て結婚。3歳上の夫は結婚後も変わらず優しく恋人同士のような理想の夫婦として 周囲からの羨望も集めてきた。5年後に子供が授かると夫は、子供を溺愛し、率先して面倒みてくれる「よい旦那様」で、心底幸せだったと言うナオさんの声は曇っていた。婚記念日も20年目までは毎年サプライズを用意してくれた。最初の暴力沙汰が起こる前までは本当に幸せだったと。涙ながらに語るナオさんには、妻として支えてきた自負がある。夫が豹変した理由が全く分からない。それが分からないままでは、離婚も継続も決断がつかない。
「霊視や透視に加えて、守護霊対話で原因を捜し当て、夫の本心を読み取って欲しい」
また「夫の暴力が治せるなら、祈祷もお祓いも結果が出るまでして!」 とのご依頼を承った。
暴力と言っても程度は様々。手近な物を投げつけ怪我を負わせたり、殴る蹴るなどの事態が頻繁に起きてるならば犯罪の域だが...。ナオさんからは、最悪とも思える環境から一時逃避する意思さえ窺えなかった。数日前には「食事がまずい」と食器を背後から投げられ頭部から血が噴き出し 救急車で病院へ。意識を失った妻を見て慌てた夫が119番した。ナオさんは、夫も頭からの出血は予想外で驚いたのだろうと。その前は、妹から着た電話を切った途端に、「俺がいるのに」と背中や腰を蹴られ、痛みで動けず何日も寝込む破目に遭っていた。
ナオさんの希望は、夫と別れることではなく、夫の暴力を止めさせて、昔のような幸せな生活を取り戻したい! 今の夫は脅威だが 「本当は優しい人」 なのだと訴えていらした。そして、こうなった原因も知りたい。ここまで夫を変えたモノが何なのか?それを知らなければ、3年もの間さらされた恐怖や苦痛の記憶を水に流せるかどうか...怯えて生活する事になりそうだと。
鑑定結果
ナオさんとご主人を繋ぐ “ 縁のパイプ ” の状態から霊視してみたが、そこに異変は見当たらなかった。愛情は存在している。ならば愛する妻を26年も経って なぜ傷つけるのか? 誰もが首を捻るような事象への、核心に辿り着こうと試みた。今現在を更に詳しく視ようとすると、影のような奇妙なエネルギーに遮られる。「なんだ、これは?」...。
占いの領域ではなく霊能の案件だと承知していたが 想像以上に厄介な力が纏わりついていた。
夫の意思による暴力というよりも、夫婦間に第三者の霊的関与が視られた。それは邪念や邪気の類であるため 気づかぬ間に巻き込まれていく。但し、そこには何らかのキッカケが有るはずだった。ナオさんの場合、恋人期間の6年と結婚後の20年の計26年は「いつも幸せだった」と涙するほどに良好だったのだ。通常ならば こういう経験をすれば、以前が幸せだったとしても、「あれは錯覚だった。今のが本性だ!」と過去は過去として葬り憎しみが生じるものだが...。
「そのころ仕事上の人間関係でストレスを抱えてるとか、愚痴があったと思いますが?」と、促してみたが、栄転したばかりで浮かれていて愚痴は聞き流していたという。支店長の椅子を得た夫を誇りに思う妻の高揚感とは裏腹に、会社の期待に応えようとプレッシャーに苛まれた夫は、元来の責任感の強さが裏目に出て自分を追い込んでいく。
出張も増え接待される立場になった。人脈作りにいそしむ夫を待ち受けていたのは、出張先での受けてはいけないタイプの接待だった。その小規模会社の汚濁接待は業界でも噂として囁かれていたが、受けた誰もが口をつぐんでいた。料亭に「お忍びで」と誘われ、案内された部屋には お酌係の女性もいたが芸事の披露はない。次の間があり 旅館のような造り。勧められるまま飲んで酔い潰れ、気づいた時には 和服美女と二人きり。次の間に運ばれ 敷かれていた布団に寝かされていた。帰ろうとしても、吉原炎上かと見紛いそうな女性が放してくれない。
コトの発端は?と透視した結果、視えた映像がこれだった。デートクラブから派遣された女性の得意先がこの下請会社であり、ナオさんの夫は罠に嵌められ弱味を握られることになった。
何もなかったが問題なのは、先方が用意した女性と一夜共にいた事実。些細な要求なら黙認するしか手がなくなった。捏造よりも怖い心理戦で負けた。騙されたと知ったところで、すでに後の祭り。誰にも相談できない。まして妻のナオさんに救いを求める事柄ではない。すべてが計算し尽された、接待という名の巧妙な落とし穴だった。自尊心が砕け、心に隙間ができる。
その隙間に忍びこんだのは下請会社の人間ではなく、あの夜にいた女性。名刺も渡してないのに、女は携帯番号を知っていた。「近くまできたので食事でも」と馴れ馴れしく言われ困っていると「お忘れですか?」と口調を変えた。携帯番号は下請会社が教えていた。不意打ちで来た誘いに不快感この上なかったが、この際、放し飼いは危険だと会ってしまう。支店長という肩書にも惹かれたが、献上品であった自分に紳士的態度を貫いた男は「あなただけ」と、女は引かなかった。執拗に口説きの電話が鳴る。迷惑だと告げても粘る女に恐怖を感じ、勢いで、下請の営業にクレームを入れた。以後、電話の悩みからは解放されたが...別問題が勃発した。
心身共に不調な日が続くようになる。頭痛から始まり、わずかの間に倦怠感が全身を覆った。気力も失せて仕事が冴えず自嘲気味になっていく。何もかもが億劫。心に空いた隙間は口を開け、憑き物が憑き放題。ときおり記憶がない事に気づいても放置した。手や指に傷を見つけて「どこで怪我したんだろう?」と一瞬考えるが、モヤモヤし始めると思考をストップさせてしまう。頭の中に他人がいるような不可解な感覚がしばしばあったが、それも「気のせい」にして薬を乱用し、午後になると睡魔との闘いに暮れる。手の傷が妻を殴った跡とは知る由もない。
「誰か五寸釘でも打ってるのか」と ナオさんに手を上げながら冗談で言うが、現実味はない。
裏接待で侍った女が、告げ口された腹いせに報復の念を送るエナジーバンパイアだとは、想像さえできなかったろう。夫の理解が及ぶはずもない。見えぬ力で、夫婦仲を崩壊に導いてると説いたところで、恐怖を隠して否定するか或いは怒るか!?
ナオさんには今に至るまでの経緯と、ご主人の崖っぷちの心境や、暴力揮っても記憶が曖昧になってるのは喪失ではなく、催眠に罹った状態で他者が肉体をコントロールした結果であり、本人の意思ではないことなど伝えた。特に、元凶が持つ黒いパワーの影響力は、詳しく説明した。エナジーバンパイア体質の人間が、どんなものか!一筋縄どころか 出雲大社のシメ縄で絞めあげても苦闘する。生きるエネルギーを吸い取る段階を既に超えて、怨みの念がご主人のメンタルエネルギーを浸蝕し続けている危険な状態であると。にわかには信じ難くても、実際に存在することを過去の事例を挙げご説明した。
守護霊対話で得た情報を元に、標的になってるご主人を中心に、お祓い&エネルギー補給を繰り返し、間隔を置いて実行した。レベル強のエナジーバンパイアと戦うのは、盾を左手に握り、お祓い時だけ許される霊剣を右手に討って出るのだが、肝心なのは弱気厳禁! 密教神の力で火炎輪を創り結界とする。自分を滅ぼす事ができるのは、他人じゃない、己を信じきれず不安を注視する自分自身。守護霊様からのメッセージも伝えて、注意して欲しい事など諸々を手順を追って話し「目に宿っていた険しさが去りました」敢えて笑顔で見つめることで、再浸入の防備に役立ちますと伝えて、今後の成行きを見守ることにした。
その後
翌日 夫が出張から帰宅した。また不機嫌になったら? 離れていよう! と食後の片付けに忙しいフリして近寄らないよう努めた。いわれなき暴力を受け続けた3年間が、ナオさんの心に沁みこんでいた。「虎の尾を踏まないように」が昨日までの教訓だったのだ。急に変われない。
「どこか具合でも悪いのか?」と聞かれ思わず顔を見た。心配そうな目をして近づいてくる夫に、後ろへと身を引く妻。怪訝な顔して「大丈夫かっ?」と一気に駆け寄る夫。条件反射で目眩クラクラよろける妻を、危ないっ!と両手で支え「無理したらダメだよ」と健康ドリンクを鞄から取り出してきた。ナオさんは(幻覚でも見てるのか?)自分が壊れたと本気で思ったらしい。昔が懐かしいという郷愁が募り幻を見るようになったかと涙がこみ上げ、体から力が抜け、ユラリと夫の腕に倒れていった。「しっかりしてコレ飲んで!これは効くから」と騒ぐ夫に「あの...何ともないから」と呟き、「私よりアナタどうしたの?」と聞くと、夫は不思議そうな表情になり 「えっ?僕はいつも通りだよ。ホントに大丈夫なのか?!」と心配された。
呆気に取られマジマジ見ると、険しさが消えている。トゲトゲしい物言いも雰囲気もない。凶暴な猛獣に見えてた夫が、仔猫にでも変身して帰ってきたような妙な感覚だった。望んでいたことだが、突然すぎて対応が追いつかない。夫は、3年に及んだ暴力の数々を覚えていないようだった。ナオさんも蒸し返す気はないが、ただ、確認したい衝動に駆られた。
嵐が去って、ようやく訪れた平和を、永遠と信じ頼っていいのか、一過性の可能性もいれて備えるべきか? 困惑していた。(暴力を揮われ苦しんだけど 魂を盗まれ縛られてたせいよね)ナオさんは自らを説得していく。夫の目を覗いて(自分をしっかり持って。大丈夫よ!)と、笑みのアイコンタクトでパワーを注ぎ、邪気の浸入を防いでいた。この行為によって、ご主人との間に新たなパイプが紡がれ、咄嗟の事態に遭っても、ナオさんが盾となり祓える。
頭痛や倦怠感が「最近ね、治まってるんだよ」と、夕食時に夫が嬉しそうに告げてきた。気力も湧いてきてトシのせいじゃなかったと喜ぶ夫に、「実はね..」と、夫本人も知らない隠されていた真実を説くと、うつむいて「途中までは覚えがある」ボソリと認めた。発端となった裏接待アクシデントや その後のイザコザは煩わしいほどに記憶していた。妻にバレる事を恐れていたが、その妻はとうに知っていた事になる。面目丸潰れだが、それ以上に自分が派手な暴力を揮っていたことに驚いた様子だった。「本当に、アナタ! 記憶になかったのね」とナオさんが言うと、夫は苦悶の表情を浮かべて「すまなかった」と、うなだれた。
謝って欲しかった訳じゃないナオさんは、過ぎた事はもういいのよ と慰めを口にし、問題は「その女はエナジーバンパイアという体質で自信家だから往生際も悪く」まだ終わってない気がする...心を一つにして対策を練りたいと提案した。初めて聞くバンパイアという言葉に夫の反応は鈍かったが、逐一丁寧に説明すると、「体調が崩れた頃、気づくべきだった」と、身震いするような仕草をした。自覚して終わりではなく、そこからが反撃。危険に晒されていることを本人が知って、ナオさんが援護する事により、邪気も生霊も撹乱され送り主に還る。
心一つに併せる事で要注意期間が半分になる。1ヶ月半が過ぎ、夫が正気に戻ったのを確認して、洗いざらい話した。知人の紹介で霊能者に相談したことも隠してない。
夫出張の夜には「心配だから」とお電話を頂いた。
暴発しそうな気配があれば、目を凝視し逸らしてはダメとお伝えしていた。暴力は嘘のようにないと伺いホッとする。ただ、盾となったナオさんは、邪エネルギーを受ける事があり新たな悩みの種となった。代償として疲れが半端ない事もあったが、暴力よりは遥かにマシだと笑って「お祓いとチャージを徹底的に」と言われ、祓っては、全身全霊でエネルギー投入! を、繰り返した。短期決戦でとのご要望は解かるが、身代りは荒療治でオススメできないと言っても、「構わない」というナオさんの決意に従った。
それが功を奏し、一年は油断禁物のケースを 半年も要らず、解決した。
エナジーバンパイア女が接待に向かう途中で事故に遭い、脳挫傷で記憶喪失に。それと同時に夫は完全快復し、低迷気味だった運気も回復、業績を伸ばし、勢いで例の下請を切る。家庭ではナオさんに頭が上がらなくなったケド。身代りも厭わなかった妻に日々感謝して生きる旦那様。献身的な妻で男冥利に尽きるとご主人から電話が入り「この歳で益々新鮮ですよ」と。電話越しに、朗らかに笑うナオさんの声が届いた。
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