ご相談内容
レナさん(40代)は愛犬の存在だけを慰めに、K県の一戸建てのアパートで息を潜めて暮らしていた。
「ここから助け出して欲しいの。私の家はここじゃないのよ!」 と訴えて「どうにかなりそう」と悲愴感いっぱいの声で、救出して欲しいと繰り返しおっしゃった。誘拐されて監禁されている訳ではない。一応は自由に、愛犬と散歩にも行き...仕事にも就いていた。現実には束縛は何もなかった。
「2年前ここに引越して来たんだけど、ここに来た理由が思い出せないの。私は札幌で夫と暮らしていたはずなのに。もっとたくさんワンちゃんがいたはずなのに」と苦しそうな息遣い。K県と札幌では とんでもなく遠い。故郷から出たことのないレナさんが土地勘のない場所へ、愛犬を連れて引越しをした?...いったいどういう経緯で?...一つの疑問を抱きながら伺ってみた。断片的で構いませんから、記憶を一つずつ取り戻しましょう?!と手さぐり状態から始まった。
この時のレナさんの生体磁場エネルギーは「やっと生きている」程度しかなく、薄れたオーラ・肉体はグラウディングができていない。本来あるべきエネルギーが漏れている。大病を患い生死の境をさまよってる病人でもない限り、これは有り得ない惨状といえた。
レナさんは、本能の警鐘に2年かけ気づいたと。迫る危機を本能がキャッチして、なんとかしたいと考え始めると、不思議に睡魔がきたり 頭の中に霧が降りてくるという。気力が奪われてズルズルと今日まできてしまった。「私は何に捕まえられているの?」...見えない何かに操られている!...それしかもう考えられない...「怖い!」と、声が震えていた。
心身のエネルギー状態を、レナさんにそのまま伝えて「すぐ調整します」と。波動修正やエナジーチャージの前に、全身をすっぽりくるんでいる邪悪な念を祓うことが優先された。汚いモノや邪まなモノ...レナさんの場合は【 生霊 】だが、祓わずにエネルギーだけ入れても漏れてしまう。まずは、『お水を飲んでください。お香かホワイトセージがあれば焚いてください』とお願いした。すると、セージはネットで購入したものがあるが、一度焚いたら気持ち悪くなって吐いてしまったから嫌だ!と予想外の抵抗をうけて「絶対にあの匂いは嫌だ!具合が悪くなる」の一点張り。セージはハーブであり動物系の香りではない。匂いの好みが違う程度なら理解もできるが...断固としての拒否だった。
お香やセージの煙は 生霊を追って姿をあぶりだすため憑依している者は嫌がる。正体を知られたくないから避けようとするが、煙は追いかけ 奇妙な立ち昇りかたを始める。【人形 (ヒトガタ)】らしくなり見てる側には それが誰なのか?!読めてくる。お祓いには都合が良くなるのだが...。
剣はあるが盾はなし...の環境下で 結界を張り時間はかかったが、憑いていたモノを祓って浄化が行き渡ったところへ 天地&自然界のエネルギーをそそぎ、同時に、グラウディングをして整えていった。
活力が漲る心身を取り戻すのには、巧みに成功しなければ!意思を排除された操り人形にされる。
元気になったレナさんは「ちょっとセージを焚いてみようかしら」と興味を示し、実際に焚いてみたら「えーっ!いい匂いだわ。前は腐ったような匂いだったと思うけど 今は癒される。なんで?」と。
憑依している者に操作されてた。霊的に拘束を受けていた証し...となれば誰が?と犯人捜しとなる。
札幌で家庭を築いていたレナさんは、高校のクラス会に出席して破目をはずし2次会へ。その店で紹介されたのが 出張に来ていた男・カンベだった。幼なじみのご主人と結婚して、恋と火遊びの区別もつかないレナさんは 甘言を恋と勘違いして、誘われるまま駆け落ちしてしまった。愛犬を道連れに抱き...あとは手ぶらでフェリーに乗った。東京で一ヶ月暮らし...カンベの実家があるK県へと移ったが、恋心は既に消えていたという。なのに、なぜか、あらがえなかった....と。
衝動的で、後先を考えない行動を取って、あとから「私のどこにそんな勇気が?」と自分の行動が解せなくなり...狐につままれた気分に陥ったと。
札幌から東京へ、そして遂には見知らぬK県へと男の誘導で進み、口説かれた側のレナさんの意向は、悉く無視された。はたから見れば駆け落ちだが...「変な言い方だけど、催眠術にかかったような」と一言加えたあとに、「故郷での誤った一夜が人生を破滅させた、後悔してる」と。
K県に移ってすぐに同棲は解除され ホッとしたのも束の間、見張られていると溜息がもれた。
カンベは実家の大きな母屋に住み、レナさんは敷地内にある親所有の陽の当たらない借家を当てがわれていた。5軒並んで建つトタン屋根の家は、母屋に最も近い一戸。壁が薄いから気分で立ち寄るカンベの気配が分かるほどだと...「こんな惨めな家に住んで、人生を悲観して何度も自殺を考えた」と涙声、だが怨む力が宿り始めている。生活費の面倒をみてくれる訳でもなくパート代で暮らしていた。男は旦那気取りで「今夜はここに泊るからサ、夕食はなに?」週一で訊ねてくる。愛犬は怯えて隠れる。
何度も脱出を試みたが失敗していた。話し合いなんて絶対ダメ!逃げきれるか?捕まるか?の二択だとハッキリと言いきるレナさんに同意した。この2年の間に何度もご主人に連絡をいれ詫びて「戻ってくるなら許す」と言われ、その言葉を頼りに計画した脱走は事前に見破られ阻止されていた。明日ここを出ようと覚悟をつけると、心を見透かしたようにカンベが泊りにくる。翌日には気力が抜けて呆けたようになってしまう。500m先の公園までご主人が迎えに来ていたこともあった。そこまで愛犬を抱いて走れば この生き地獄から抜け出せるのだが、おかしなことに...その約束も待合せ場所も忘れてしまう。
更におかしな事に、翌々日になると「約束してたっ!」と思い出し自己嫌悪に陥る。当日は根が張ったように座りこみ食事も摂れない脱力感に支配されている。思いつくかぎりの策は尽くしたが なぜか?察知されてしまう。不気味でたまらない...人間技じゃない!と嘆きと怒りが積もっていた。
レナさんの望みは唯一つ、恐怖の家から逃げ出して 夫の待つわが家に帰りたい!
残してきた愛犬たちと野原を駆ける生活に戻りたい...幸せだった昔に時間を巻き戻したい!
この状態でそれは叶うのだろうか?
家族そろって気味が悪いカンベ家から脱出する方法を 魔術でも呪術ででも授けて欲しい!もはや悲願といえた。錬金術も用いてみるとお約束して、この先一週間ほど“コードの切断”に協力して欲しいと幾つか日常に取り入れて欲しいことをお伝えし、期間限定の結界を張り収束並びに解決へと向かった。
鑑定結果
熱愛による逃避行で家庭を捨てたのではない事実を、最初にお伝えして「フェリーが出航した時どんな気持ちでしたか?思い出してみてください」ひとこと一言をゆっくりと催眠を解くように伺うと...。
「淋しい気分になった...だけど行くしかないって、義務感のような...」と遠い昔を思い出すような、どこか漠然とした言い方をされた。感情的な記憶がひどく曖昧になっていた。
2次会の店で誘ってきたカンベに警戒心を抱く前に、レナさんは催眠コマンドをかけられている。
おそらく当時のレナさんは世間知らずゆえの隙が目立っていたのだろう。男の下心を見抜くすべもなく、甘言を愛に置き換え一夜を共にした。昨夜会ったばかりの男と駆け落ちする気は微塵もなかったはずだが、つめよるカンベに「一緒に行く」と言わされ、機械的に動いた。
愛犬の顔がレナさんの母性から離れず、カンベはやむなく承諾した。飛行機を利用せずにフェリーになったのも計画的だった。レンタカーが用意され 思考力を奪われたレナさんは言われるまま乗りこんだ。
東京までカンベが運転し観光名所にも立ち寄ったのは「やっぱり帰る」と言わせないため。カンベは、レナさんの顔色を窺いながら言葉たくみに、事に及んだ。
逃げようとすれば30代後半のレナさんには機会もあった。しかし、気力と考える力が奪われていた。
カンベは最強レベルのエナジーバンパイアだった。東京に着く前に レナさんは体調を崩していたが、病院にも行かせてもらえず、カンベが与える市販薬を飲んでいた。エネルギー不足による体調悪化が薬で改善される訳もなく、ウィークリーマンションで寝込む日が多くなった。頭がボンヤリしてだるく、思考は停止して一ヶ月が過ぎる頃、「K県に引越そう!」と促された。愛犬の面倒を見るのがやっとの状態で、「もう、これ以上は移動したくない」と訴えたが、「俺の実家だからサ。経済的な問題も解決するし...不動産をかなり持ってるから働かなくてもいいんだ。レナも楽になるんだよ?」
あらがえなかった。経済的な悩みなどは夫の元へ帰れば即解決する...苦労など強いられない。本能は「帰りたいっ!」と叫ぶが、さからえない。カンベは肝心な話になると顔を近づけ目線を合わせて諭すように笑みを浮かべて言う。不可解な事に、拒絶したい言葉をいわれても...催眠にかかったように誘導されて「わかった」と答えてしまう。「わかった」と言うまで 眼に憑りつかれて疲労感がたまる。
うやむやな形でカンベの実家があるK県へと身柄送検されるように移った。怒鳴られた訳でもなければ現実には何もないのに、なぜか怖い...薄気味悪い...「この人の中に血や涙ってあるのだろうか?」と、ぼんやり思いながら従順を装うしかできなかったと当時を語る。「最初の数日はアイツの実家の2階で過ごして、両親と一緒の食事で吐きそうになった。息子の後妻って言われたわ。離婚直後だって初めて知ったのね。5日位したら...レナの住む家の準備ができたよって、この汚い家に連れて来られたけど、母屋の2階から丸見えだったのよ」と思い出したかのように一気に。
そして出張で札幌に行ってたというのも嘘だと知った。仕事には就いていなかった。カンベはレナさんと同年代...なぜ自分が狙われたのか? と考えるようになり「私はこの先どうなるんだろう」と悲観し自殺願望が貌を現してくるようになった。
レナさんによると、逃げたいという想いが募ると自殺願望が現れるサイクルになっていた...偶然じゃない!と。エナジーバンパイアの奇怪な能力を理解してもらえるまで説明して「人間だと思ったら危険ですよ。見かけは人間でも 中身は異次元の生物だと思ってください。勘が鋭いのも特徴ですから、 レナさんの心身が不調な時は来ないけど、よくなり始めると来る...つまり波動が上がると訪問があるのでは?」と伺うと「その通りなのよっ」と。残留思念が部屋のなかでアンテナの役割をしてます、と伝えて霊的大掃除をしましょう!と提案させていただいた。お祓いと祈祷にプラスαで時間短縮が図れる。
大きめの水晶クラスターをお送りして母屋に向けて置き、毎日 粗塩を撒いて一時間位したら掃除機で吸い取る...これを朝晩続けてもらった。晴れた日には近くの公園に行く。松の木が公園にあり愛犬は そこがお気に入りで...というレナさんに「松は浄化作用があるんです。ワンちゃんは本能に素直だから。レナさんも松の木に触ってください」と。家賃と公共料金は家主持ちだが、衣と食は稼がなければならず週に数日のパートで賄っていた。それが体力の限界になってきたと惨状を訴えるレナさんの声にも、一条の光が射してきたようだった。部屋に配置して欲しいものや、食して欲しいもの、お風呂の入り方や波動の扱いなどの、自分でも簡単にできそうなモノはイザって時に便利だからとお伝えして、家全体のお祓いと浄化をし、レナさんの周囲には見破られない結界を張り巡らせた。
丹念に祓って、浮き出てきた生霊の残骸に息吹をいれ3倍にしてカンベ自身に送りこむ。これによって、送られた方は感覚が鈍くなり体調や運気も停滞を起こすため、レナさんの波動が上がっても気づかず、手も足も出せなくなる。...それどころではなくなる!よもや2年も操ってきた彼女の行為だとは思わず、敵は誰だ?!とばかりに探りムダにエネルギーを費やすだけ。七転八倒の苦痛と、盛運と自負していたものが落ちこみ、焦燥感に苛まれ、レナさんへの関心や縛る手も緩まり“隙”ができる。
この原則を活用し然るべき収束を図りながら、「ご主人は迎えに来てくれるかしら?」と伺うとレナさんは「たぶん大丈夫だと思う。主人はこの異常を少しは理解してくれてるから。今 電話してみる」と早速に動いた。通常は電話しにくいかと思っていたが杞憂だった。5分程すると明るい声が聞こえた。
来週の三連休にクルマで迎えに行くから今度は必ずだよ!と約束してくれたとのこと。待ち合せ場所も公園じゃなくて家の前まで行くから!と。寛大なご主人の器のデカさに感服...とレナさんに。そして、「ここで気を抜いては元も子もなくなります。決行日に成功するまで気は張りつめていて」と念押し。
これまで何度も遠路はるばる迎えに来たご主人を裏切る結果になり、自己嫌悪に陥っていたレナさんは、「助けて欲しくても主人にはもう電話できないと思っていた」と告げて「今度は大丈夫!」パワーを感じるとおっしゃった。○月○日○時に決定して、この日を決戦日と銘打って、日課を強化した。
当日朝に密教パワーを送り ≪成功した≫ という連絡が入るまで祈祷を続けていた。
朝一のフェリーにご主人が乗っている。レナさんは荷物を最小限にし愛犬だけ連れて出る覚悟で時計を見ていた。さすがに心臓が波打つが、今日が人生の明暗を分ける日になる。離れて暮らしていた夫婦が本来の姿を...自分の幸せを取り戻す日となるか否かの瀬戸際。決して母屋に気付かれてはならない。
気力や記憶、精神力が奪われないようカンベ一家に目隠しをしてあるが、レナさんがミスらないかと気が揉めた。そして正午前に連絡がきた。
「うまくいきましたっ!主人とワンちゃんと県外に脱出したとこです」清々しい声。レナさんの弾んだ声を初めて聞いた。このまま一路ひたすら札幌へと向かい深夜には着くだろう。
エナジーバンパイアの恐怖...執念深さや逆恨みが得意なこと、なにより時空を超えて来る黒い霊力の存在を、しばらくの間は忘れずに防備をして欲しいと伝えたが、ふと「そっちは大丈夫かな?」と。
重篤な病気に罹れば 治っても数年間は再発のリスクに対処するのと同様に、いきなり気を抜かないでください!くれぐれも!と、しつこくお伝えはしていた。それさえ守って頂ければ何事も起きない。
夜になって「今、札幌に帰ってきました。渋滞もなく赤信号にも捕まらないで不思議なほどスムーズにいけて神様に守ってもらってる感じでした。予定より3時間早く着きました~」とメールが届いた。
その後
無事レナさんは家庭に戻った。ご主人の叱責を待っていたが、「戻ったんだから、もういい」と。
許してくれたが、詫びるべき事はきちんと詫びて「尽くす事でつぐなう」「そうじゃなければ自分で自分が許せないもの」とご主人の胸に飛びこんでみた、と。2年余も留守にしていたが、5匹の愛犬は覚えていてくれて、翌朝レナさんの姿を見ると嬉しそうにはしゃぎ傍を離れない。
ワンちゃん6匹連れて散歩にでかけ...改めて、この環境こそが至福だった!そう気づいたら涙があふれた。ご主人から「この子たちもキミが帰るのをずっと待ってたんだよ。もうバカな事はするなよナ」と優しい声で言われ嗚咽してしまった...ご主人は「もう忘れよう」と言ってくれるけど何だか辛いと。
もう戻れないと真剣に悩みぬき自殺さえ考えていた頃、この情況は 夢のまた夢 だった。一寸先は闇とはよく言うけれど、逆に、一寸先は光ありも また在り得る。心は故郷の家族のもとにあり、身体が拘束されていたあいだに、レナさんは ≪気づき≫ を得た。仕事が多忙でなかなか構ってくれないと夫に不満をこぼしていた以前のレナさんは消えて、内助の功を発揮する ≪糟糠の妻≫ が目標になった。
「幸せを取り戻しました」と〆て、メールをいただいた。
これで、もう不幸に見舞われることはないだろう一件落着だと、他のお客様のエナジーバンパイア対策に向かった。とにかくお祓いの上にもお祓いと熱心に真言を唱えながら「今回のは強度3レベルだから、さほどに手こずることもない!スグに片づく」と仕事三昧に浸かっていた。次々と寄せられる被害の詳細を伺いながら、同時期に3人ほどなら通常のことで「命を使うから使命なのぉ」なんて言ってた。
レナさんの件は終了したものだと思っていた頃、また、お電話をいただいた。「?」な気分で受けて、「どうなさいましたか?」と聞くと...「あの...真夏なのに悪寒がひどくて薬を一箱飲んでも効かないの。お昼頃から始まって毛布にくるまってるけど寒いの。祓ってもらえば楽になるから 夜になるのを待ってて電話したの」 声が寒さのせいで震えていた。いくら北海道でも 季節は日本国中が真夏だ。
毛布を3枚重ねて寝ても 寒さで睡眠に入れない...今朝までは何事もなく ご主人と朝食をとっていた。
「いってらっしゃーい」と笑顔で見送って、鼻歌まじりに掃除や洗濯などの家事をこなし、帰宅が遅いご主人の夏バテ防止用レシピ本を見ていた。多忙な夫の栄養管理を趣味にして、夫とワンコの世話が生き甲斐!と幸せを謳歌していた。そこだけに集中していた。
昼食後は愛犬たちと散歩に行こうと、料理本を見ていたとき...背後から氷を浴びたような奇異で嫌な感覚が走り、またたく間に全身に寒気が広がった。風邪でもこんな急な症状はありえない!予兆もなしで悪寒に襲われ、寒さで身動きが取れない。気休めでも薬を飲み毛布を引っ張りだしてきた。でも、寒気は体の中から放たれてる感じで一向に温まらない。ご主人に電話するのは憚られた。
生きるためのエネルギーが著しい洩れかたをしていた。肉体も精神体も これでは生きる屍状態と言えた。レナさんが悪寒がひどいと言うのも納得ができるむごさ。憑物...取りつけられたパイプが視え、まずはそれを切断。真言の力が最速で効果を出すため、お祓いで斬った。天地自然のエネルギー注入を、入れられるところまで入れる。...まるで輸血。およそ30分でレナさんの心身は元に戻ったが、問題点が残った。「もうかなり経つのに何故こんなことが?!」オーラに繋がられていたパイプは一本や二本ではない。危うければ、寝たきりにされるほど...タコ足配線で憑いていた。
パイプが全力で稼動を始めたのが今日のお昼前。カンベ家を逃げた日も、たしか昼前の時刻だった。
嫉妬と逆恨みの情念が一気に流れこんでいた。「何事もなかった」というレナさんに「些細な事でも、なにか思いあたる事はありませんか?」と伺うと、脱出した翌日に電話があったが 出なかったら深夜にメールが着て「やり直そう、明日迎えに行く」。驚いたレナさんは「とにかく迷惑だから来ないで」と返信した。すぐにメールが着て「明日、札幌へ行くから丁度いい」と執拗な嫌がらせがあったと。
普通体質の人がするなら単純に嫌がらせで済む。気にしなければいい話だが、カンベは普通じゃない。
エネルギーを盗むことを得意とするバンパイアで、タチが悪いことに目視が不可能な相手。
レナさんは関りたくないと着信拒否にした。思い出すだけで恐怖の旋律が走るという。カンベと関った記憶のほうを削除したいのに...いなくなって欲しいと、エネルギー満タンになった体で絶叫モード。
「毎日の対処法は実行して頂けてますか?」と聞くと、「えっ!最初の一ヶ月間はちゃんとしてたけど...北海道とK県なら遠く離れているから、もう大丈夫かなと思って...したりしなかったり。忘れていたかも。そんなに、ずっとしなきゃいけないの?...幸せボケしてたかも」と言われ、腑に落ちた。
「強力な生来のバンパイアであれば、日本と南米ほど離れていても 隣家ほどの距離でも、それは関係なく生霊も飛ばせるしパイプも繋げるんです。日常に取り入れてもあの方法なら続けられるはずですが如何ですか?...一生ではなく半年の間だけですよ。我慢する内容は何もないし」と理解を求めた。
レナさんは「迂闊だったわ、あんなに言われてたのに」と、今回の件が相当ショックな様子で「私が甘かった。他人の心を操作して、バカげた発言も平気でする男に常識なんてあるはずなかった」と...。
ご主人の帰宅前で心配かけずに済んだことが何よりだった。
撃退方法はある。それを気を緩ませることなく実行できるか否か?...それだけの事だった。
エナジーバンパイアである相手は奇妙な自信を持っているから防備をしない。そこを突く。徹底した防御を前にしては、エネルギー泥棒も催眠も運気奪取もなにもできない。鏡の論理で自滅するのみ塵となる。急に老化した肉体と共に精神も混乱を起こし、そのまま燃料不足でイナクナル。レナさんの希望は必然で達成される。防御が最大の攻撃となりえる...(普通は真逆に例えられるけど)。
霊障を発して、撃退法がレナさんの中に根付いた!というのも皮肉な話だが、これ以降は意識を強くもって「撃沈させてヤル!」と迎え撃ちを繰り返すうち、ある日を境にカンベの顔も思い出せなくなったと後日談でエネルギッシュな電話を頂いた。「この世から消えた」レナさんの甲高い笑い声が残った。
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